STAAD.Pro Help

G.17.1 剛性解析

STAAD.Proに組み込まれている剛性解析は、マトリックス変位法に基づいています。変位法による構造物のマトリックス解析では、構造物は離散的な構造要素の集合体にまず理想化されます。

荷重を2方向(フレームメンバーまたは有限要素)に伝達するスラブ、プレート、直接基礎などの構造システムは、3ノードまたは4ノードを持ち、それらのノードにおいて互いに結合している多数の有限要素に離散化される必要があります。各要素は、ジョイントにおける力の釣り合いと変位の適合性を満足するように仮定された変位を持ちます。荷重は、要素上の分布荷重の形で、またはジョイントにおける集中荷重として作用します。板曲げ効果のみならず、平面応力の効果も解析において考慮されます。

解析上の仮定

構造物をすべて解析するために必要なマトリックスは、次の仮定に基づいて生成されます。
  1. 構造物は、頂点(ノード)において結合される、ビーム、プレート、およびソリッドタイプの要素の集合体に理想化されます。その集合は、ノードに作用する集中荷重によって載荷され、反作用を持ちます。これらの荷重は、任意に設定された方向に作用する力、およびモーメントです。
  2. ビームメンバーは、縦長の構造メンバーであり、長さ方向に一定で2軸対称、またはほぼ2軸対称な断面を持ちます。ビームメンバーは、常に軸力を伝達します。2つの直行する任意平面におけるせん断と曲げも受け、ねじりも受けます。この点から、これらのビームメンバーは、マニュアルでは"メンバー"と呼ばれます。
  3. プレート要素は、3ノード、または4ノードの厚さの変化する平面要素です。ソリッド要素は、4ノードから8ノードの3次元要素です。これらのプレートとソリッド要素は、マニュアルでは、"エレメント"と呼ばれます。
  4. 各ノードに作用する内力と外部荷重は釣合います。任意メンバーに対してねじり、または曲げ特性が定義されている場合、関連するマトリックスの生成において各ノードで6自由度(すなわち、3つの並進と3つの回転)が考慮されます。メンバーがトラスメンバーとして定義される場合(すなわち、軸力のみを伝達する場合)、3つの(並進)自由度が各ノードにおいて考慮されます。
  5. 要求されるマトリックスの生成では、2つのタイプの座標系が使用され、ローカル座標系、および全体座標系と呼ばれます。

ローカル座標軸は、各要素に割り当てられ、要素剛性マトリックスの計算労力が平均化され、最小化されるように方向が取られます。全体座標軸は、すべての理想化された要素に対して規定された共通の基準であり、これにより、要素の力と変位は共通の参照体系に関連付けられます。

基礎式

構造物の全体剛性マトリックスは、多種のメンバー、要素剛性を系統的に足し合わせることにより得られます。構造物上の外荷重は、構造物のノード点にのみ作用する、離散化された集中荷重として表されます。

剛性マトリックスは、これらの荷重を以下の式によりノード変位に関係付けます。

Aj = aj + Sj⋅Dj

この定式化は、ジョイントが自由に変位できるか、サポートによって拘束されているかによらず、構造物のすべてのジョイントに適用されます。移動が自由なジョイント変位の成分は、自由度と呼ばれます。全自由度数は、解析における未知数の数を表します。

変位について解く方法

連立一次方程式を未知量について解くための多くの方法があります。

STAAD.Proでは、要素剛性マトリックスは、FEAプログラムで使用される標準マトリックス手法を用いてグローバル剛性マトリックスで出力されます。STAAD.Proで使用される技術は、パブリックドメインで利用可能になったルーチンに基づいて開発されました。グローバル剛性マトリックスは次のように分解されます。

[ K ] = [ L T ]  ⁢ [ D ]  ⁢ [ L ]

これは修正ガウス法です。

[ K ]  ⁢ { d } = { F }

は、以下のようになります。

[ L T ]  ⁢ [ D ]  ⁢ [ L ]  ⁢ { d } = { F }

これは、{d}を得るために順方向と後方の置換ステップに操作できます。STAAD.Proは単位行列を検出し、Stardyneからコピーされた手法を介してそれらを解くことができます。行列を解くために、プログラムは修正コレスキー法と数学的に等価なアプローチを使用します。ただし、演算順序、メモリ使用、およびファイル使用については高度に最適化されています。

バンド幅の考察

計算時間とメモリを最小にするため、内部的な記憶順序が自動計算されます。 

複数構造と構造の統合性 

構造物の統合性は、非常に重要な要求であり、すべてのモデルで満足する必要があります。開発したモデルが1つ以上の適切に接続された構造を表していることを確認する必要があります。

"統合された"構造物、つまり"1つの"構造物は、メンバー/エレメント間に正しい"剛性の接続"が存在するシステムとして定義されます。モデル全体は、1つ以上の統合された耐荷重システムとして機能します。STAAD.Proは高度なアルゴリズムを使用して構造の完全性をチェックし、モデル内の複数の構造の検出を報告します。複数の構造物を意図していない場合は、解析前にそれを修正することができます。「ユーティリティ」リボンタブには、その他にもいくつかのモデルチェックツールがあります。  

モデル化と数値的不安定の問題    

不安定問題は、2つの主な理由により起きる可能性があります。

  1. モデル化の問題

    不安定条件を生じるさまざまなモデル化の問題があります。それらは、2つのグループに分類されます。

    1. ローカル不安定性 - ローカル不安定性は、メンバー端部の固定条件がメンバー内の1つ以上の自由度について不安定を生じるような条件です。ローカル不安定性の例は、次のとおりです。
      1. メンバーリリース:両端において自由度(FX、FY、FZ、およびMX)のいずれかをリリースされたメンバーは、この問題を生じやすくなります。
      2. コラムとビームからなるフレーム構造で、コラムが"トラス"メンバーとして定義されたもの。そのようなコラムは、せん断、またはモーメントを上部構造からサポートに伝達する能力がありません。
    2. 全体不安定性 - これらは、構造物の1つ以上の方向へのスライドや転倒に対して構造物のサポートが抵抗しないような場合に生じます。たとえば、立体フレームとして定義されるピンサポートの2次元構造物(XY平面にあるフレーム)がZ方向に力を受けると、X軸回りに転倒を生じます。もう1つの例は、すべてのサポートがFX、FY、またはFZに対してリリースされている立体フレームです。
  2. 数学的精度

    数学的精度のエラーは、逆マトリックスを求める過程で数値的不安定が生じる場合に起きます。釣り合い式のうちの1つの項は、1/(1-A)の形を取ります。ここで、A=k1/(k1+k2)であり、k1とk2は、2つの隣接するメンバーの剛性係数です。非常に"硬い"メンバーが非常に"柔軟な"メンバーに隣接している場合、つまり、k1>>k2、またはk1+k2 = k1A=1、したがって1/(1-A) =1/0の場合。したがって、隣接するメンバーの剛性の大きな変動は許容されません。人為的に高いE、またはIの値は、このことが起きる場合、低減されます。

    数学的精度エラーは、長さと力の単位が、メンバー長さ、メンバー特性、定数などに対して正しく定義されていない場合にも起きます。

    作成されるモデルが2つ以上の分離した構造物ではなく、1つの構造物を表していることを確認する必要があります。たとえば、エキスパンションジョイントをモデル化する目的で、ユーザーは、分離した構造を同じ入力ファイルにおいて定義することになったとします。1つの入力ファイルで定義される複数の構造物は、大きく誤った結果を導きます。